「大国主って、どんな神様?」——名前は聞いたことがあっても、どんな神様かはよく知らない、という方も多いかもしれません。
この記事では、大国主がどんな神様なのか、いつ・どこに登場するのか、有名な物語やまつられている神社まで、やさしくたどっていきます。
大国主はどんな神様
大国主は、出雲(いまの島根県)を舞台に、国づくりを成しとげたとされる神です。地上の国を耕し、ととのえた「国づくりの神」として知られています。
葦原中国をととのえた神
神話のなかで、大国主が舞台にするのは「葦原中国(あしはらのなかつくに)」と呼ばれる地上の世界です。
まだ荒れていた土地を耕し、人の暮らしの土台をつくっていったとされます。田畑や医療のはじまりを、この神に重ねて語ることもあります。
たくさんの名前を持つ神
大国主のおもしろいところは、名前がとても多いことです。
大己貴神(おおなむち)、八千矛神(やちほこ)など、物語や場面によって別の名で呼ばれます。名前が多いのは、各地でさまざまに信仰され、いくつもの伝えが一柱の神に重なっていったからだ、ともいわれます(諸説あります)。
大国主が最初に登場するのはいつ
いちばん古い登場は、天照大御神たちと同じく、奈良時代の『古事記』と『日本書紀』です。
古事記に登場する大国主
古事記では、荒ぶる神・須佐之男命(すさのおのみこと)の子孫として描かれます(何代あとかは伝えによって差があります)。
若いころは大己貴神と呼ばれ、多くの兄神——「八十神(やそがみ)」に、いじめられる立場でした。のちに根の国(ねのくに)で試練を乗りこえ、地上を治める神へと成長していきます。
日本書紀での伝え方
日本書紀では、須佐之男命の子として、より近い関係で伝える一書もあります。
このあたりの系譜は書物によってまちまちで、いくつもの説が併記されています。
大国主の主な物語
大国主には物語がたくさんありますが、ここではとくに知られた二つを、触りだけ紹介します。
因幡の白兎
ひとつは、「因幡の白兎(いなばのしろうさぎ)」です。
傷ついて泣いていた一羽の兎に、兄神たちは意地の悪い言葉をかけました。けれど大国主だけは、正しい手当てのしかたをやさしく教えます。すると兎は元気を取りもどし、大国主の幸せを言いあてた——という物語です。やさしさが幸運を呼ぶ、この神らしいお話として親しまれています。
国づくりと国譲り
もうひとつは、「国づくり」と、それに続く「国譲り」です。
大国主は、海のむこうからやってきた小さな神とともに、力を合わせて地上の国をつくりあげます。ところがのちに、天の世界から、その国を譲るよう求められます。
つかわされた武の神との交渉のすえ、大国主は国を譲ることを受け入れます。そのかわりに、自分をまつる立派な宮を建ててほしいと願いました。この宮こそ、のちの出雲大社だと伝えられています。
大国主をまつる神社
大国主をまつる神社は各地にありますが、その代表が、島根県の出雲大社(いずもおおやしろ)です。
出雲大社
「いずもたいしゃ」とも読まれる、日本を代表する古い神社のひとつです。
国譲りのときに約束された宮に始まると伝えられ、大国主をまつる場所として、長く篤い信仰を集めてきました。
縁結びのご利益
出雲大社は、「縁結び」の神社としてとても有名です。
旧暦十月、全国の神々が出雲に集まって縁について話し合う——という言い伝えがあり、この月を出雲では「神在月(かみありづき)」と呼びます。そうした背景から、人と人の縁を結ぶご利益があるとされます。
縁は男女のものだけでなく、人と人のあらゆるつながりを指す、と語られることも多いようです。
大国主と関わりの深い神々
大国主の物語には、多くの神が寄りそいます。国づくりを助けた小さな神、国譲りを迫った武の神、そして交渉役をつとめた大国主の子たち。
一柱ずつ知っていくと、出雲の物語が、もっと奥行きをもって見えてきます。
あとがき
戦って国を治めるのではなく、譲ることで語り継がれた神——大国主には、どこか穏やかな印象があります。
傷ついた兎を助けた若き日の物語から、縁を結ぶ神としての今の姿まで、一本の糸が通っているようにも感じられます。今度「縁結び」という言葉を聞いたら、遠い出雲の神を、少し思い出してみてください。